衆議院選挙その後…「もし食料品のみ消費税ゼロになったら」
第51回衆議院選挙は政権与党である自民党の大勝というかたちで終わりました
一方、選挙直前に公明党と組んだこれまでの野党第1党である立憲民主党は、大幅に議席を落としました
しかし自民党と中道改革連合(立憲+公明)の総得票数の差は実は約100万票ほど…
この差で獲得議席数の明暗がここまで分かれる現行の選挙制度(小選挙区制)
死に票が多すぎる現行制度に、大きな問題を感じる選挙でもありました
さて前回までにお伝えした”消費税”について
その続き・・・
では「もし食料品のみ消費税ゼロ」になったら
その起こり得る経済的・心理的な影響を、マクドナルドのような大手外食チェーンを例にお伝えします
🍔 食料品のみ消費税ゼロになった場合
1. 外食産業が置かれる状況
◆ 「外食は課税、食料品は非課税」という線引きの問題
食料品がゼロ税率になると、
スーパーで買う食品=0%
外食=10%(現行)
という差が明確になります
マクドナルドのような外食チェーンは、
「同じハンバーガーでも、店で食べると課税、スーパーで買う冷凍食品は非課税」
という構造に直面する
→ 結果として起こりやすいこと
• 外食は“割高感”が強まる
• 「家で食べた方が安い」という心理が強まる
◆ 価格設定の難易度が上がる
消費税ゼロでスーパーの食品が安くなると、相対的に外食の価格が高く見える
店内飲食とテイクアウトで価格設定を変更せざる負えなくなる
→ 起こり得る対応
• 値下げ圧力が強まる
• セットメニューの価格調整が必要になる
• 「低価格帯メニューの強化」が進む
• 原価高騰の中で利益率がさらに圧迫される
利益率が低い飲食店は、数円の差が大きく響く
2. 消費者の行動心理の変化
◆ 「節約モード」の人ほど外食を避ける
食料品がゼロ税率になると、
“家で食べる方が圧倒的に得”
という感覚が強まります
特に以下の層は外食頻度が下がりやすい
• 子育て世帯
• 単身者で自炊が苦ではない層
• 物価高で節約志向が強い層
◆ 「外食は贅沢」という心理が強まる
税率差が明確になることで、
外食=贅沢、という意識が強まりやすい
マクドナルドのような“日常使いの外食”でさえ、
「今日は家でいいか」と判断されやすくなる
🍽では外食産業における雇用と利益構造にはどんな影響が?
1. 外食産業の雇用に起こり得る変化
◆ 客数減 → 人件費削減圧力が強まる
外食産業は固定費の中で 人件費の比率が高い ため、客数が減ると真っ先に人件費調整が起こる
起こり得る動き
• アルバイトのシフト削減
• 新規採用の抑制
• パート・アルバイトの時給上昇が鈍化
• 店舗の営業時間短縮
• 人手不足対策として進んでいた「人員増強」が止まる
◆ 中小飲食店では廃業・統合が増え、雇用が減る可能性
大手チェーンは資本力があるため耐えられるが、
中小飲食店は「外食離れ」の影響を強く受ける
→ 結果として
• 廃業増加
• 従業員の雇用喪失
• 大手チェーンへの労働力移動が進む
外食産業全体の雇用は縮小しやすい
2. 仕入れ税額控除が使えなくなることによる利益圧迫
ここが外食産業(飲食店)にとって最も深刻なポイント
◆ 食料品がゼロ税率になると、仕入れの消費税が“控除できない”
外食産業は、食材を仕入れるときに 消費税を支払う
通常は、仕入れ時に払った消費税(仕入税額控除)を、売上時の消費税から差し引ける
しかし、食料品がゼロ税率になると…
→ 食材の仕入れにかかる消費税が「控除できない」
つまり、仕入れ時に払った消費税が丸々コストになる
◆ 外食は課税売上なので、売上に対する消費税はそのまま納税
• 売上に対する消費税はそのまま納税
• 仕入れの消費税は控除できない
という 二重の不利 が発生する
◆ 利益率が大きく圧迫される
外食産業はもともと利益率が低い(3〜5%程度の企業が多い)
そこに 仕入れ税額控除の消失 が加わると、利益率はさらに低下する
• 経費のなかで食材仕入れの額が大きい
• 仕入れ税額控除が使えないと、数%単位で利益が削られる
• 価格転嫁しようにも、消費者は「外食は高い」と感じやすい
→ 値上げも難しい、利益も減る、という板挟み状態
◆ 中小飲食店はさらに厳しい
大手チェーンはスケールメリットで仕入れ価格を抑えられるが、中小店は仕入れ単価が高く、税額控除が消える影響がより大きい
→ より廃業リスクが高まる
🍱 食品ゼロ税率でも仕入れ値が下がらない理由
外食産業は価格転嫁が難しい・・・
1. 食品のみ消費税ゼロでも「仕入れ値が下がらない」可能性
◆ 仕入れ値は“税抜価格”が基準
食料品がゼロ税率になっても、
仕入れ価格の本体(税抜価格)が下がるとは限らない
なぜなら、
• 食材の価格は市場価格(需給・原材料・輸送費)で決まる
• 税率が変わっても、卸売業者や農家の“税抜価格”は別問題
つまり、税率がゼロになっても、仕入れ値の本体価格が下がらなければ、外食産業のコストはほぼ変わらない
◆ むしろ「仕入れ税額控除が消える」ことで実質コストは上がる
通常は、仕入れ時に払った消費税を売上の消費税から差し引ける(仕入税額控除)
しかし、食料品がゼロ税率になると…
• 仕入れ時の消費税 → そもそも発生しない
• その代わり、控除できる税額もゼロになる
外食は課税売上のままなので、売上に対する消費税はそのまま納税
仕入れの控除がない分、実質的に負担が増える
→ 仕入れ値が下がらないどころか、利益率が悪化する可能性が高い
◆ 卸売業者が価格を下げるインセンティブが弱い
食料品の税率がゼロになっても、卸売業者側には
「税率が下がったから値下げしよう」という動機がない
むしろ、
• 原材料高
• 人件費高
• 輸送費高
• 円安による輸入コスト増
などの要因で、値下げどころか値上げ圧力が強い
◆ 競争環境が変わらない限り、価格は下がらない
税率がゼロになっても、
• 農家
• 食品メーカー
• 卸売業者
の競争環境が変わらなければ、価格は下がらない
つまり、税制だけでは仕入れ値は動かない
2. 外食産業の「価格転嫁の限界」
外食産業は、他の業界に比べて価格転嫁が非常に難しい
理由は大きく4つ・・・
◆ 外食は“代替手段が多い”ため、値上げすると客が離れやすい
外食の代わりはたくさんある
• スーパーの惣菜
• コンビニ弁当
• 冷凍食品
• 自炊
• デリバリー
特に食料品がゼロ税率になると、
家で食べるコストがさらに下がる → 外食の割高感が増す
→ 値上げすると客離れが起きやすい。
◆ 外食は“価格に敏感な層”が多い
数十円の値上げで客数が大きく動く
外食は「日常消費」なので、消費者は価格に非常に敏感
→ 価格転嫁の余地が小さい
◆ 外食は“労働集約型”で、コストの多くが固定費
外食のコスト構造は
• 人件費
• 家賃
• 光熱費
• 食材費
などが大きい
これらは簡単に削れないため、
値上げしないと利益が出ないが、値上げすると客が減る
というジレンマに陥る
◆ 価格転嫁しても「外食=贅沢」という心理が強まる
食料品がゼロ税率になると、
外食は“贅沢品”として認識されやすくなる
その結果、
• 値上げの許容度が下がる
• 消費者が外食を控える
• 価格転嫁がさらに難しくなる
最後に・・・
🏭 1.スーパー、食品卸業者は利益増
食品ゼロ税率で「輸出還付金のような効果」が起きる
◆ 食品がゼロ税率になると、仕入れの消費税は“控除できる”
• 食品メーカー
• 卸売業者
• スーパー
は、食品を売るときに消費税を0%で販売するが、仕入れ時に払った消費税は控除できる
これは輸出と同じ構造
→ 結果
仕入れ時に払った消費税が“還付される”可能性がある
これが「輸出還付金のような効果」になる
🛒 2. スーパーに起こる影響
◆ 消費税ゼロになり還付金が入るからといって、スーパーが食品の販売価格を下げる義務はない
• 仕入れ値は市場価格で決まる
• 小売価格は競争環境で決まる
税制が変わっても、販売価格が下がるとは限らないし下げる義務もない
◆ むしろ「利益率が改善する」可能性が高い
食品は粗利が低いが、ゼロ税率で還付が発生すると、
食品部門の利益率が改善する
スーパー、卸業者にとってはとっても追い風
まとめると、「食料品のみ消費税ゼロ」にすると、
飲食業界の利益は減り、
雇用は減り、
潰れる飲食店(特に中小零細個人事業主)が増え、
気が付いた時(外食をしたいと思った時)には、もうすでに店は無い(特に地方)
そして一部の業態(スーパー・卸業者など)のみ利益が上がり
大手外食産業(チェーン店)のみ残り、
地域の食文化が失われ、
賃金格差が広がり、
失われた供給力を埋めるために外資企業が進出、
という社会になるかもしれません
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